すごいぞ梨木香歩

村田エフェンディ滞土録

村田エフェンディ滞土録


梨木香歩はわたしにとっていつも惜しい作家だった。
彼女の作品は「ここまで素晴らしい話だったのにアレレ?」
ってな具合に後半失速してしまうのだ。(とくに裏庭)
それが残念で仕方なかった。


ところが最近様子が変わり「家守綺譚」では失速がさほど
気にならなくなりいいぞいいぞという感じになってきた
ところでの本書。「家守〜」にもこちょと出てきた留学生
村田くんの土耳古滞在記。


100年前の留学とはいえ、宗教、人種、戦争 今とそんなに
変わらず(そういえば梨木さんご自身も留学していましたね)
魅力的な下宿人達に囲まれ お互いがお互いを思いやるそんな
あたたかい雰囲気に包まれながら村田くんの滞在記は綴られて
います。


わたしのお気に入りは主人公村田が知人の見舞いに行く時、
同居人のギリシャ人 ディミィトリスがスッと醤油を差し出す
ところ。土耳古でまさか醤油が手に入るなんて奇跡のような
出来事に村田くんがお礼を言うとディミィトリスが言うセリフ
「わたしは人間だ。およそ人間に関わることで私に無縁な事は
一つもない。」


かっこよすぎ!
司馬遼太郎の小説に出てきそうな一節にクラクラ。
いつかこのセリフを自分の人生で言ってみようと心に決め
ました。


今年の本屋大賞第四位の「家守綺譚」に比べてこちらの評価が
少ないのが残念。未読の方はぜひ読んでくだされ!